きみのためにしたんだよ と真夜中にドアの外から声がする いなだ豆乃助 アパートかなんかでせうか、ドアの前を通りすぎる人の声が聞こえてくる。
一枚のドアを挟んで、知らない人の生が通過する。
どうしやうもかうしやうもないときにグイとひとのみ水原紫苑 岩月園生 作者には水原紫苑が効くのね。
わたしは・・・、最近歌集を読んでないなぁ、反省。
針穴に黒糸とほし自らにズボンの尻を縫ひにけるかも 河村栄二 中年だか、初老だか、おぢさんにのちつよつと得意げな様がみえる。
「尻を縫」ふところに、可笑しみがある。
バス停に待つ吾が影は数台の車に轢かれなお元気なり 高橋寿美子 結句まで、やや不穏な雰囲気であつたのが「元気なり」と展開するところ、読者も元気になる。
がさがさの手に付けられしクリームの君の香りと一日あそぶ 安野文麿 このハンドクリームは作者の手に付けられた?
それとも「君」の手に付けられたもの?
どちらでも、素敵。
デパートの光は妙に明るくて何も買はないわたしも照らす 桃生苑子 人工照明はあまねく当たる。
当たりたい人も当たりたくない人も、当てたいものも、当てたくないものも。
むむ
posted by 文(ぶん) at 20:06|
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