2016年04月30日

短歌人誌 五月号 会員2欄より好きな歌を その2

画像





リサイクルショップにコート売れしかばかねて欲しき本を奮発せり     鈴木裕子


   奮発できて、良かつた。


盤面に向きあうかぎり勝敗を決めねばならぬ人も機械も     木下真由美

   Game の愉しみや何処。


畑の土起こせし火照り残りいて真夜に覚めたり足掻く夢より     根本芳一


並木道にただ一本の四季桜咲きて寒気を和らげてをり     福竹良子


火をともすことならできるそんな気がしている これは会いに行く道     笹川諒


   青春だぜ。


ひもすがら雪消の畑にはたらけば蕗の薹のはな七つ八つ咲く     小林恵子


くつたりと肌にやさしき寝巻着て髭剃り終へて父はまどろむ     柊慧


   高齢であろうお父さまに注がれる眼差し。


左手にて子を横抱きにし若き母 あの年頃は何でもできたな     木村弘子

  そう、あの年頃は、他は何にも見えてゐなかつたな。


語らふもけふを限りと思ひつつかたみに手を振るさりげなく振る     平田侑

   別れはさりげなくあらねばならぬ。


魚卵手にうけてゐるとき血が重くなるやうでまた泣いてしまつた     かかり真魚
ラベル:短歌
posted by 文(ぶん) at 21:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 未分類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月29日

2016年04月28日

短歌人誌 五月号 会員2欄より好きな歌を その1

画像








燃え尽きるときが来たりておのづからさめてゆくなり使ひ捨て懐炉     鶴羽一仁

   恋や、しかり。


パンの耳ばかりあつめて子の菓子をこしらえる春の一日があり     鑓水青子

   菓子と春の一日の取りあはせや善し。
   「春の」の後の一呼吸で「一日」がなんとも優しくなる。


よひやみのひとしくあれば街中の道は夜道になりにけるかも     鈴木秋馬

   夜道がいとほしくなつてくる。


われひとりの魔法とおもふ夜の店のこの寄る辺なき陳列棚に     宮澤麻衣子

   夜のコンビニでありませうか。まよひごのやうな気持ちになります。
   「陳列棚」のふるめかしさ。


玄関に復員の伯父立ちをりき三歳の吾の記憶の中に     中山由美子


「今日は母の日、お母さん好きなもの食べましょう」と店内放送は     山田泉

   スーパに夕飯の買い物に来たお母さん、今日は自分の食べたいものを、優先しませう。


眠るとき向こうの世から手が伸びる滑らかにして温かい手よ     山田多雨

   この手は、二十年前に逝つてしまつた、母の手だ。


面倒でもやってよかったと思うのはたとえばもやしの根っ子取ること     久保由美子

   わたくし、過去に一度だけ取つたことあるのみ。


数千の春のたまごをはこびをり高木鶏卵社黄身もゆれつつ     藤島朋代

   「黄身もゆれつつ」で、とくべつな春のたまごになつた。


清いみず足をいれたら好きやったあんたのやくそく流れてしもた     KENZO
ラベル:短歌
posted by 文(ぶん) at 21:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 未分類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする